空間は電場と磁場の波を伝えるという性質があり、この波のことを電磁波と呼びます。電磁波の波の大きさによって、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X線・ガンマ線、に分けられます。電磁波の中で電波は波長が一番長く、物体に吸収されにくいという性質を持っているので遠くの方まで伝わります。電波の波長を変えることで信号を送受信することが可能で、この原理を応用したものが無線通信です。
電波を利用した無線通信は昔から用いられていて、遠く離れた場所にいる人に電線を使わずに信号や音声・映像データなどの情報を伝えるために使用されてきました。このように電波を利用した通信を行うための通信機器を開発したり、効率良く信号を電波に乗せて伝える方法を研究・開発をするための学問が、無線工学です。ちなみにLANケーブルや電話線などは電線を使って信号を伝達しますが、ケーブルを使用した有線通信と電波を使った無線通信を電気通信と呼びます。無線工学は、電気通信の中のひとつの分野といえます。
無線工学は、1860年代に電波が発見された頃から研究が行われるようになりました。初期の頃はモールス信号を用いた通信が行われていましたが、1900年には電波に音声を乗せて送信することに成功しました。1920年にはラジオ放送が始まり、現在はテレビ放送や携帯電話などの幅広い分野で無線通信が行われています。今は多くの人が日常的に無線を利用した音声通話(携帯電話)やインターネット接続を利用していますが、これらは全て無線工学の研究による成果といえます。
人類は電波を利用して情報を伝達するための通信機器を開発して実用化されていますが、使用できる電波の周波数には限りがあります。現代の無線工学では、限られた周波数の電波資源を有効活用してより多くの情報を伝送するための通信方式の研究開発が行われています。通信方式の開発に加えて、電波を発生させたり受信するための通信機器の小型化・省電力化するための技術開発も進められてきました。現在は多くの人がスマートフォンを利用していますが、本体の中に小さなアンテナが組み込まれています。私たちが小型軽量で便利なモバイル機器が使えるようになったのも、無線工学のおかげです。
無線工学を学びたい人は、大学の工学部や高等専門学校・工業高校・専門学校の電子システム科に進学する方法があります。無線技術に関して更に深く研究をしたい人は、大学院に進学すると良いでしょう。